はじめに
2026年3月に出版された「咲良は上手に説明したい!」、お読みになられましたでしょうか?僕は新聞の書評欄でこの本の存在を知り、また知り合いのテクニカルライターからの評判もあり、4月に購入しました。
この本の帯から引用しますと、この本箱のように紹介されています。
令和で一番熱いお仕事小説誕生!!
バイト駅員だった咲良が飛び込んだのは、”テクニカルライター”の世界。製品のトリセツを作るその職業は、驚きと感動に満ちていた!
わかりやすい文章が書けなくて悩んだことがある方、一旦、この本を読んでみてください!(by 担当編集)
個人的に、この本のポイントとなるのは、最後の引用の部分だと思っています。わかりやすい文章を書くことは、才能ではなく、技術です。
この技術を学べば、誰でも書けるようになります。
もちろん今は、AIを使って自分の文章を添削もできますし、AIが全て書いてくれたりもします。
でも、本当にそれだけでいいのでしょうか。なぜその文章は読みやすいのか、内容がしっかり相手に伝えられるのか、その背景を知らないと、自分が書いた言葉が、自分の中に残らない、つまりは、言葉と自分が乖離する状況になっていくのではないか、そのように僕は懸念しています。
ですので、ぜひマニュアル制作などに関係ない、一般の方に読んでいただきたい本ですね。
テクニカルライターは憧れの職業にはならない
実際のところ、テクニカルライターというのは、いわゆるライターとは違います。「ライターになりたい」「小説家になりたい」などという方が目指す職業ではないと思います。
ですので、憧れの職業にはならないと僕は考えます。
この小説の主人公、咲良は、とある出来事をきっかけに、テクニカルライターの浅倉に憧れ、彼女と同じ会社に入り、テクニカルライターを目指すことになります。
この辺は小説ゆえの流れであり、実際には起こらないと思いますし、「テクニカルライターをめざしていました!」と、制作会社に入ってくる新人を、僕はほぼ見たことがありません。
また、この小説に出てくるような制作会社は、ほぼ存在しないとも思います。この業界において、求められることが多いのは、「自動車の整備士経験があり、自動車のサービスマニュアルが書ける人」です。家電などの取説に携わる人というのは、ごくわずかだと思います。
なので、文章を書く、というよりは、図面を読めたり、車の整備ができたり、そのような作業が多くなります。
(もちろんこれは私が元働いていた会社での状況ですので、一般論ではないかもしれません)
テクニカルライターの仕事は表に出づらい
雑誌ライター、花形の仕事ですよね。小説家、憧れますよね。
テクニカルライターの仕事は、ほぼ表に出ません。もちろん世の中には出ているのですが、取説には携わったテクニカルライターの名前が掲載されるわけではありません。
そして、メーカー内で働く人ではない場合、つまりメーカーから仕事を受けて仕事をする制作会社の人であれば、その仕事に携わったことを世に出すこともありません。
いくら頑張って文章を書いても、イラストを書いても、凝った構成にしても、それは自分の手柄にはならないのです。
常に縁の下、それがテクニカルライターです。
しかしテクニカルライターは自分の仕事に誇りを持っている
だからといって、テクニカルライターは仕事をおろそかにしません。どのようにすれば、読み手に正しく、わかりやすく情報を届けられるのか、そればかり考えている人種といっても過言ではありません。
そして、いくら自分の名前が出なくても、自分が作り上げた仕事に誇りを持っています。
この小説には、そんな思いを持つ人たちがたくさん出てきます。
ありがとう、この本を世に出していただいて
この本がもっとヒットしてくれると嬉しいです。
以前、TVドラマで、出版社の校閲者を題材としたものがありました。校閲という世界も、奥深く、世の中にはあまり知られていないけれども、大切な仕事です。
この本もヒットして、ぜひTVドラマになるくらいになってほしいです。
主役の咲良は誰がいいかなあ・・背が高い設定で、まだ20代前半くらいの女優さん・・・。ちょとぱっと出てきませんが・・。
最後に
今回はマニュアルではなく、小説のご紹介になりました。
きっとマニュアルに関わっている人たちは、こちらの本は読了済みなのではと思いますが、まだの方はぜひお読みになっていただければと思います。
マニュアルを作り続けるって正直辛いですよね。納期の問題、時々発生するクライアントとの問題、などなど。
この本を読むと、ちょっと泣いてしまうかもしれませんね。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

