はじめに
取説などマニュアルは、文章とイラストで構成されていると言っても過言ではありません。そして、特に取説においてはイラストが重要です。文章だけの取説って、読みたいと思えませんしね。
10年以上前になりますが、私が取説制作会社の営業として働いていたころ、住宅設備メーカーのマニュアル制作担当者の方からこの様な言葉をもらいました。
「イケアみたいなマニュアルを作りたいんだよね」
イケア、はい、IKEAです。スウェーデンが発祥の家具・インテリア販売店ですよね。そこで販売されている家具類に付属してくる取説は、ほぼイラストのみで構成されています。文章は極力減らされていて、イラストだけで組み立て方がわかる、そのようなものです。
この住宅設備メーカーの担当者の方は、ユーザーが読む取説の担当ではなく、設置業者さんが読む、設置マニュアルの担当でした。
ですので、この方が目指していたのは、「設置業者さんに、イラストだけで設置方法を説明できるマニュアル」ということでした。
当時は私も、「そうですね、イラストだけで内容がわかるマニュアルにしたいですよね!」と賛同し、その様なマニュアルを作っていきましたが、正直言いますと、道半ばで終わってしまいました。
正確に言えば、この担当者の方がいる限りは、そのような「ほぼイラストだけ」のマニュアルをキープできたのですが、この担当者の方がいなくなってしまい、他の方に変わってしまうと、「このイラストだけのマニュアルはわかりづらい」という話になり、どんどん文字が増えて行ってしまいました。
この背景には何があるのでしょうか。
今回は、取説におけるイラストのあり方をテーマに書いていきたいと思います。その上で、マニュアル全般におけるイラストの役割について考えていきます。
取説におけるイラストの種類
取説で掲載されるイラストはどのようなものがあるのか、その作成方法から考えてみます。
写真をトレースして作るイラスト
実際の商品や作業風景を写真で撮影し、その写真をもとに線画化・イラスト化する方法です。
向いている状況は
- 商品の形状を正確に見せたいとき
- 部品の位置関係を間違えたくないとき
- 組み立て手順、取り付け手順を説明したい
などが考えられます。
CADデータ・3Dデータから作るイラスト
製品の3Dデータや設計データをもとに、取説用の線画や分解図を作る方法です。
向いている製品群は
- 工業製品
- 機械部品
向いている取説上の項目は
- 組立図
- 分解図
- 部品リスト
などが考えられます。
キャラクターなどを決めて漫画的に作るイラスト
ペルソナなどからキャラクターを決めて、そのキャラクターを使い漫画的に作っていくイラストです。
それ以外にも、ちょっとしたポーズをしている人物なども該当します。一般的にはキャラクターイラストと呼ばれ、マニュアル類で多く使われるテクニカルイラストとは毛色が違うイラストになります。
向いている場合としては
- ユーザーに世界観を伝えたい場合
- ユーザーに親近感を持ってもらいたい場合
- 読みやすい取説にしたい場合
などが考えられます。
アイコン・ピクトグラム化したイラスト
細かいイラストではなく、シンプルな記号やアイコンとして表現する方法です。
使用する場としては
- 注意・禁止事項
- 安全表示
- チェック項目
などが考えられます。
断面図・透過図として描くイラスト
外からは見えない内部構造や、動きの仕組みを見せるために、断面や透過表現で描く方法です。
このイラストで伝えられることの例とすると
- 内部構造の説明
- 空気や液体の流れの説明
- 熱や風の流れを説明
- 機械構造の説明
などが挙げられます。
商品の形、構造を正確に伝えたい場合であれば、
写真をトレースして作るイラスト
CADデータ・3Dデータから作るイラスト
多少デフォルメなどをしてでも、その世界観を伝えたい場合であれば
キャラクターなどを決めて漫画的に作るイラスト
パッとわかりやすく伝えたい場合には、
アイコン・ピクトグラム化したイラスト
断面図・透過図として描くイラスト
という棲み分けで使っていくことになります。
つまりは、イラストを掲載するには「目的」があり、その目的を達成するために最適なイラストの「手法」を選ぶ必要があるということになります。
イラスト自体が目的(たとえば、イラストの格好良さを読む人に伝えたい)などになってはいけない、ということです。
取説におけるイラストの役割とは?
目的、つまりは、役割と言い換えることもできるかもしれません。
取説におけるイラストの役割をまとめてみました。
作業手順を順番に理解させる
取説では、組み立てや使用準備などの流れが掲載されています。この流れをステップごとに迷わず進められる様に補助をする役割があります。
形・位置・向きを伝える
文章だけでは伝わりにくい部品の形状や取り付け位置、操作の向きを視覚的に示す役割があります。家具の組み立て時などでは重要ですよね。私は、結構このあたりで挫折することが多いです。この取説、イラストがわかりづらいわー、どこにネジをどの向きでさせばいいんだよー、みたいな。
注意・警告の内容を具体的にイメージさせる
危険な行動や注意すべき場面を視覚化し、安全行動につなげるという役割があります。私がたずさっていた住宅設備関係の取説ではこの部分のイラストを多く作りました。家電関係の取説でも多く使われていますね。やはりビジュアルで見せることは、安全確保のためにも重要です。
メンテナンス時・トラブル時の確認ポイントを示す
点検・清掃・交換などの際、一体どの部位を確認すれば良いのかわからない、というときありますよね。または「動かない!どこがおかしいの?」となったときなども。そのようなとき、イラストでチェックポイントが説明されていると、ストレスが少なく、その先行うべきことに進むことができます。
他にも考えていけば様々な役割が出てきますが、一言でまとめると、こうなるかと思います。
ユーザーの取説を読む負担を減らしてあげるのがイラストの役割
取説における文章量を抑え、必要な情報を直感的にユーザーが理解しやすい取説にするため、イラストを工夫する必要がある。
このことは取説制作者はよくわかっていますし、そのために日々努力しています。
最後に
最初にご紹介した、私のお客様の例。
とある担当者の方は「文字を極力減らしてイラスト中心で進めていきたい」とおっしゃられた。
その担当の方がいなくなり、次に担当した方は「このイラスト中心のマニュアルでは内容がうまく伝わらない」と考え、文字を増やしていった。
実はお二人とも、間違いではないのです。お二人とも、
ユーザーのことを考えてマニュアルを作っていた
のです。
イラストは確かに、ユーザーの読む負担を減らしてくれます。
ですが、イラストは取説の全てではないのです。
イラストで説明することが最適の場合もありますし、文字で説明することが最善のときもあります。
場合によっては動画が必要なときもあるでしょう。
取説などマニュアルにおいては、最適な手法を選択することが大切です。
次回は動画についても考えたいなと思っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
