はじめに
私まにゅまには、2026年6月現在、三級知的財産管理技能士(管理業務)の資格を保有しております。そして、来月7月に二級取得のための試験を受ける予定です。
ということもあり、今回はマニュアルと著作権の関係について考えてみたいと思います。
ちなみに、知的財産権の中には、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などもありますが、著作権もこの中に含まれています。世の中でよく聞く言葉とすると、「特許権」と「著作権」になるかなと思います。
特許権というのは、簡単に言えば発明を保護する権利、となるのですが、この発明については「自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能」なもの、とされています。
マニュアルにおいてはあまり当てはまる権利とはならないので、今回は著作権について取り上げていきます。
著作権とは
著作権について説明しているWEBページは多くあります。
例として下記を紹介しますね。
著作権法の条文では
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作権者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。
と記載されています。
また
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
と、著作物について説明されています。
ここでのポイントをあげていきます。
・文化の発展に寄与することを目的
・・・特許法などにおいては、産業の発達が目的、とされていますので、それらの権利とは目的が異なってきています。
・思想または感情を創作的に
・・・人の考えなどの表現などが必要になりますので、ただ事実を列記したもの、などは著作物として認められません。また、創作的、という部分は、個性があらわれているか、という意味であり、技術の高さや独創性の高さが求められているわけではありません。
・文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する
・・・文化の範囲に属しているという部分が大切で、産業の範囲に入るような工業デザインは著作物としては保護されません。(意匠法などでは保護されます)
では、実際どんなものが著作物になるの?という部分ですが、著作権法で例はあげられています。
(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
ちょっとわかりづらい部分がありますよね・・。そう、そのくらい、著作権って、わかりづらいんですよね。
さらに著作権を持つ著作者が持つ権利、という部分でもわかりづらさがあります。
著作権は、著作者人格権と著作権(財産権)に分かれます。
| 著作者人格権 | 公表権 |
| 〃 | 氏名表示権 |
| 〃 | 同一性保持権 |
| 著作権(財産権) | 複製権 |
| 〃 | 上映権および演奏権 |
| 〃 | 上映権 |
| 〃 | 公衆送信権 |
| 〃 | 口述権 |
| 〃 | 展示権 |
| 〃 | 頒布権 |
| 〃 | 譲渡権 |
| 〃 | 貸与権 |
| 〃 | 翻訳権、翻案権等 |
| 〃 | 二次的著作物の利用権 |
著作者人格権については、著作者だけが持つことができる権利ですので、譲渡や相続などはできません。著作者が死亡した場合は、この権利は消滅します。
ただし著作権(財産権)は、権利を譲渡したり相続することができます。ですので、著作者と、著作権(財産権)を持つ人は異なる場合がありますので、注意が必要です。
著作権は、原則、その著作を創作した時点で発生し、その著作者の死後翌年から70年立った時点で消滅します。ですので、著作物に関係する著作権は永久に続くわけではありません。
マニュアルに著作権って発生するの?
さて、本題に入っていきます。このサイトはマニュアルに関係する情報を掲載する場所ですので、マニュアルに対しての著作権について考えていきたいと思っています。
まず、マニュアルを構成する要素に何があるか、あげていきましょう。
- 文章(タイトル・本文など)
- イラスト(テクニカルイラスト・キャラクターイラスト)
- 表(スペックなどをわかりやすく掲載)
- 動画(使用方法の説明など)
では、それらの要素が著作物として挙げられている例示の中に当てはまりそうか、考えていきましょう。
(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
構成要素のうち、「文章」については、上記の「一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」に該当してきそうな感じはします。
他の構成要素「イラスト」「表」については、上記の「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」に該当してきそうな気はします。
残りの構成要素「動画」については、「七 映画の著作物」に該当してきそうな感じ、でしょうか・・。
正直に書くと、この記事のうえで、正解を出すことはできません。過去の判例を見ながら、「こういうふうに判断されてきたんだな」と参考にするしかありません。そのうえで続きを書いていきますので、よろしければ引き続きお読みください。
文章については、マニュアルに創作性のある表現があるかがポイント
著作物には「創作性」が必要となります。言語の著作物でいえば、例に挙げられているような「小説、脚本」などがわかりやすいと思います。
つまり、マニュアルにおける文章が著作物として認められるには、そこに「創作性がある」と判断されないといけない、ということです。
マニュアル制作者の皆さんは、文章のひとつひとつに気持ちを込めて、ユーザーに伝えるためにはどうすればいいかを日々考えていらっしゃいます。
そこには創作性がある、と言いたいところなのですが、過去の判例をみると、そのようには判断していただけない例が多いようです。
例えば取説などにおいて、対象の商品の部品構成、それらの組み立て方、使い方、注意情報などを掲載していくわけですが、そこには対象となる事実があり、それらをもとに文章を組み立てていく、だけなので、創作性はない、と判断されていることが多いようです。
もちろん、そこに創作性があると判断されるような記載があれば、マニュアルにおける文章が著作物となってくるかと思いますし、そのような余地は残っているとなるのですが、正直、マニュアルは「歴然としてある事実」を伝える媒体でもあるので、創作性を発揮する(一から全てを考えて書く)ものにはならなそうだな、とも感じます。
テクニカルイラストはおそらく著作物とはならない
イラストにおいても、上記文章と同様、創作性がポイントとなります。
自分の思想や感情を表現するため、一から生み出したイラストは、絵画として美術の著作物に該当する可能性が高いと思います。
ただ、マニュアルにおいてよく作成される、物自体を表すようなテクニカルイラストは、ありふれた表現であり、創作性はないもの、として判断されてしまうことが多いようです。
ただし、キャラクターイラストであったり、物の使い方を説明するため、構図や表現にこだわり作ったイラストには「創作性がある」と判断される判例もあったようですので、このイラストにおいては、著作物となる可能性が大きいのではないでしょうか。
動画については映画の著作物と判断される
動画については、映画の著作物として判断されると思われます。よって動画を制作、もしくは公開した時点で「著作物」となるでしょう。この動画については、自分たちの権利も大切ですが、動画制作の際に、他の方の著作権を侵害していないか、の方が、マニュアルに関連する部分においては重要だと思います。
このあたりは、また別の機会で考えていければと思います。
このように、マニュアルを構成するそれぞれの要素において、著作物に関連するもの、はありそうです。よって、皆さんが作られたマニュアルも、著作物として保護される場合があります。
では、皆さんは全員、著作権者となるのでしょうか?
会社員としてマニュアル制作に携わっている場合は・・・
著作権には「職務著作(法人著作)」というものがあります。
著作権法15条 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作物は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。
つまりは、会社で、その職務のためにマニュアルを作った場合、著作者は会社になってしまいます。
(ただ、会社において、そのような場合でも著作者は従業員にある、みたいな取り決めがあれば、著作者は作成した本人となります。でも、あまりこういうことは聞いたことがないです・・)
ですので、会社員としてマニュアルを作っている、創作性のあるイラストを作った、としたとしても、「このイラストの著作権は私にあります!権利を行使したいです!」といっても、法律的にもそのようにはならないことがほとんどですので、注意していただきたいです。
さいごに
マニュアル制作において、制作者のみなさんは、必死になって「ユーザーに伝わる表現」を考えています。ただ、それらが著作権という知的財産につながっているかというと、あまりつながらないことがほとんどである、と考えられます。
なんだかちょっと悲しいなとも思いますし、これらの権利が確率されていくようになると、マニュアル制作者の地位やモチベーションも上がっていくのではないかなとも考えます。
最初に書きましたように、私は今、知的財産管理技能検定2級の試験に向けて勉強中です。もっと専門知識を身につけて、有意義な情報を発信していけるよう、がんばっていきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

