取扱説明書は“雑誌化”すると読みやすくなる? 雑誌編集から学ぶ説明書づくり

伝わるマニュアルの作り方

はじめに

私は本を読むことが好きです。ジャンルは問わず、小説、漫画、雑誌、ビジネス本、色々手に取ります。
このサイトのテーマである取扱説明書も、本の一種とってもいいのかもしれません。

一時期、雑誌のような取説を作りたいなあと思っている時がありました。

取扱説明書と雑誌。この2つを並べると、「ずいぶん違うものでは?」と思います。たしかに、取扱説明書は製品の使い方を正しく伝えるためのもの。一方、雑誌は読者に情報を届けたり、楽しんでもらったりするものです。

でも、少し見方を変えると、意外と共通点があるのでは、と思います。
それは、取説も雑誌も、「情報を整理して、読者に分かりやすく届けるもの」であるから、です。

そのように考えた時、取扱説明書をもっと読みやすくするヒントは、雑誌のつくり方の中にけっこうあるのではないかと気づいたのでした。

取説と雑誌。共通している部分と共通していない部分とは?

取説も雑誌も、実は全部読まれない

まず、共通しているのがここではないでしょうか。

雑誌を買ったとき、1ページ目から最後のページまで順番に読む人ばかりではありません。表紙を見て、目次を見て、気になる記事を読む。記事の中でも、見出しだけ見たり、写真だけ見たり、囲み記事だけ読んだりします。

取扱説明書も似ています。製品を買ったからといって、説明書を最初から最後までじっくり読む人は、それほど多くありません。

「電源の入れ方だけ知りたい」
「このランプが点滅しているけど、どういう意味?」
「掃除の仕方を確認したい」
「エラーが出たので対処方法を探したい」

といったように、必要なところだけを見ることが多いですよね。

つまり、どちらも「全部読んでもらう」ことを前提にしないほうがいい媒体なんだろうな、と思います。

雑誌は「読みたい」、取説は「知りたい」

もちろん、雑誌と取扱説明書には大きな違いもあります。

雑誌は、「面白そう」「読んでみたい」と思ってもらうことが大切です。だから、「なぜ今、○○が注目されているのか?」「知っているようで知らない○○の話」のような、興味を引くタイトルが使われます。

一方、取扱説明書の場合は、そのような興味を引くタイトルで読者(ユーザー)を惹きつける必要はそこまでありません。

ユーザーはすでに、「何を知りたいか」という目的を持っています。
なので、取説における見出しの作り方としては、

「意外と知らない!正しい電源の入れ方」
のような煽り系にする必要はなく
「電源を入れる」
のようなストレートな書き方で十分です。

雑誌は「読みたい」をつくるもの。
取扱説明書は「知りたい」に答えるもの。

ここはかなり大きな違いですよね。

それでも雑誌の作り方は取説にも使える部分が多い

それでも、雑誌を作る時の考え方は、取説に役立つ部分が多いと思います。大きな理由は、雑誌は「情報の見せ方がとても上手だから」です。

雑誌を開くと、文章だけがびっしり並んでいることはあまりないですよね。
大きな見出しがあり、写真があり、小見出しがあり、本文があり、図解やキャプションがあります。情報が細かく分かれていて、「どこを読めばいいか」が分かりやすくなっています。

だからこそ、読者は雑誌を手に取り、読むのですし。
この読者を惹きつける見せ方の工夫、取説にもそのまま使えるのではないかと思います。

たとえば、フィルターの掃除方法を説明するとします。

長い文章で、
「本体の電源を切ったあと、フィルター部分を取り外し、水洗いした場合は十分に乾燥させてから再度取り付けてください」と書くよりも、

フィルターを掃除する

STEP1 電源を切る
STEP2 フィルターを取り外す
STEP3 汚れを落とす
POINT 水洗いした場合は、完全に乾かしてから取り付ける

というように分けたほうが、かなり読みやすくなります。内容は同じでも、「編集」の仕方で伝わり方は変わります。

ただまあ、このような書き方は、現状多くの取説で採用されていますので、目新しい書き方ではありません。

ここで取り入れたいことがもう1つあります。

取扱説明書というと、「必要な情報を漏れなく書く」ことに意識が向きやすいと思います。
もちろん、それはとても大事です。

でも、それだけを考えていては、大事なことを見落としてしまいます。
それが、「ユーザーに情報を届けられているのか」という観点です。

情報が全部載っていても、見つけられなければ意味がないからです。そこで参考になるのが、雑誌の「拾い読みしやすさ」だと思います。

雑誌では、
・見出しを見る
・写真を見る
・キャプションを見る
・気になったところだけ本文を読む

という読み方が自然にできます。

取説でも、
「見出しだけで内容が分かる」
「図を見るだけでも大まかな手順が分かる」
「注意事項がすぐ目に入る」

という状態をつくることを編集上意識していくと、ユーザビリティーが高まると思います。

もう一つ取り上げます。
取扱説明書では、つい文章で全部説明しようとしてしまうところがあります。

雑誌では、文章以外でも情報をユーザーに届ける工夫がとられています。

写真、イラスト、図、表、アイコン、矢印など、いろいろな方法があります。

それらを参考にして、取説を作る際、文章の分かりやすさだけを考えるのではなく、「この情報は文章で説明することが一番分かりやすいのだろうか?」という疑問の姿勢を持つことも大切ではないでしょうか。

これも、雑誌編集から学べるポイントだと思います。

でも取説を雑誌っぽくしすぎるのも良くない

ここで注意をしておきたいです。取説を雑誌っぽくしたいと考え、雑誌のような派手なデザインを取り入れることは推奨しません。

取扱説明書には、正確な表現が求められます。操作を間違えれば、故障や事故につながることもあります。

なので、
・分かりやすいこと
・正確であること
・誰がやっても同じように操作できること
は、必ずキープして制作を進める必要があります。

写真を大きくしたり、色をたくさん使ったりすることで、上記から外れてしまうことは、本末転倒です。

デザインを派手にすることが「取説の雑誌化」ではありません。

雑誌が得意としている、「情報を小さく分ける」「見出しで内容を伝える」「図や写真を使う」「どこからでも読めるようにする」といった編集の技術を取説にも取り入れてみる。

つまりは、双方の良いとこどりを目指すのがよいのではないでしょうか。

最後に

雑誌と取扱説明書の違いを一言でまとめるなら、

雑誌は「読みたくなる情報設計」に強く、取扱説明書は「迷わない情報設計」に強い、
ということかなと思います。

どちらが優れているという話ではありません。役割が違うだけです。

取扱説明書をつくるときに、雑誌編集の視点を少し加えると、「正しいけれど読みにくい説明書」から、「正しくて、しかも探しやすい説明書」に近づけることができるのではないかなと思います。

取扱説明書というと、「説明文を書く仕事」と思われることも多いですが、実際には「どの情報をどこに置くのか」「何を目出させるのか」「文章と図をどう使い分けるのか」など、編集者的なスキルも必要になります。

雑誌編集と取説編集は、少し毛色は違いますが、双方のスキルを合体させることで、より読みやすい、ユーザーが使いやすい取説を作ることができるのではないかなと思います。

このあたりは、また別の記事で掘り下げてみたいなとも思っています。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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