動画マニュアルは万能?向いている説明・向いていない説明って?

伝わるマニュアルの作り方

はじめに

最近は、商品の使い方やサービスの利用方法を「動画で見るマニュアル」として提供するケースが増えていますよね。特に若い世代にとっては、「動画は存在していて普通のもの」なので、職場における業務マニュアルなども、紙があったとしても、「動画はないんですか?」という声が上がるというお話も。

スマートフォンで簡単に動画を視聴できるようになり、YouTubeやSNSなどで動画を見ることが日常的になった今、マニュアルの世界でも動画化の流れは自然なものです。

実際、動画マニュアルには多くのメリットがあることは事実です。
文章を読むのが苦手な人でも直感的に理解しやすく、実際の動作や手順を目で見て確認できます。商品を初めて使う人にとっては、「こうやって使えばいいのか」とイメージしやすく、安心感にもつながりますよね。

ただ、このように動画マニュアルが増えているからといって、すべての説明を動画にすればよい、というわけではないのでは、とも感じています。

商品やサービスの内容によっては、動画では説明しづらいものもあります。動画だけでは不十分で、紙の説明書やPDF、Webページ、イラスト付きのマニュアルと組み合わせた方が、ユーザーにとってわかりやすい場合もあるのではないでしょうか。

「動画にすればわかりやすくなる」と考える人も多いかもしれません。とくに企業の上層部など。。
マニュアル制作者はその様には思わないんですけどね。。トップダウンでおりてきて、現場とすると「偉い人ななんにもわかっちゃおらんのです」と言いたくなりますよね。

そんなときに参考として頂ければと思い、今回は、動画マニュアルの向き不向きを整理しながら、これからのマニュアル制作において大切な「媒体の使い分け」について考えてみたいと思います。

動画マニュアルが向いている説明

まず、動画マニュアルが得意なことから考えてみます。

動画が特に力を発揮するのは、「動き」「流れ」「順番」「感覚」を伝えたい場合です。

たとえば、商品の組み立て手順を説明する場合、文章だけで「部品Aを本体の右側に差し込み、カチッと音がするまで押し込んでください」と書いてあっても、初めて使う人には少しわかりづらいことがあります。

どの向きで差し込むのか。
どのくらいの力で押し込むのか。
どこまで入れば正しく取り付けられた状態なのか。

こうした情報は、文章や静止画だけでは伝わりにくい場合があります。しかし動画であれば、実際に手を動かしている様子を見せることができます。ユーザーはその動作を見ながら、「なるほど、この角度で差し込むのか」「このくらい押し込めばいいのか」と理解できます。
また、音がポイントになる場合もありますよね。上記でいうと「カチッと」の部分です。この擬音、実はやっかいなんですよね。人によって聞こえ方に違いがある場合があるからです。そんなとき、動画で音も伝えることができれば、言葉で伝えることによる誤解も防ぐことができます。

また、工具や機械、家電、園芸用品、調理器具、作業用品など、実際に手を使って操作する商品は、動画との相性が良いですね。

たとえば、刈払機の操作方法、電動工具の刃の交換、掃除機のフィルター清掃、家具の組み立て、アプリの初期設定などは、動画で見た方が理解しやすい場面が多いです。

特に、複数の手順が連続している作業では、動画がわかりやすいですよね。

紙のマニュアルでは、手順1、手順2、手順3というように順番に説明していきます。しかし、読んでいる人が途中で「今どの作業をしているのか」「次に何をするのか」を見失ってしまうこともあります。私などは特にこのパターンが多いです。「今どこを読んでいたんだっけ?」となりがちです。

動画であれば、最初から最後までの流れを一連の動きとして見せることができます。作業の全体像をつかみやすく、初心者にとっては大きな助けになりますよね。

動画マニュアルは、ユーザーに「理解してもらう」だけでなく、「行動してもらう」ための後押しにもなります。

動画マニュアルが苦手な説明

次は、動画マニュアルの苦手な説明について考えてみます。

それは、「あとから必要な情報だけを探すこと」に該当する分野ではないでしょうか。

動画は、基本的には時間に沿って進んでいきます。最初から最後まで見ることで全体の流れを理解するには向いていますが、必要な情報だけをすぐに探したい場合には、かえって使いづらくなることがあります。動画にインデックスなどを入れることで解決できる場合もありますが、動画のスライダーなどで戻る、先に進むなどをコントロールすると、やりづらい部分、ありますよね。うまくみたい場所に辿り着かないという感じです。

たとえば、商品の仕様を確認したい場合を考えてみます。

サイズ、重量、材質、対応電圧、使用可能な温度範囲、部品番号、交換部品の種類など、細かな情報を確認したいとき、動画の中から該当箇所を探すのは大変です。

「この情報は動画の何分何秒あたりに出ていたのか」を探す必要があり、場合によっては何度も再生位置を動かさなければなりません。

これに対して、紙の説明書やPDF、Webページであれば、表や一覧で確認できます。必要な項目をすぐに探すことができ、比較もしやすくなります。

また、注意事項や禁止事項も、動画だけでは伝えきれない場合があります。

安全に関わる情報は、一度見れば終わりというものではありません。ユーザーが必要なときに何度も確認できることが重要です。

たとえば、「この条件では使用しないでください」「この部品を取り付ける前に必ず電源を切ってください」「雨天時は使用しないでください」といった注意事項は、動画の中で一瞬表示されるだけでは見落とされる可能性があります。

特に、業務用機器や工業製品、農機具、電気設備、安全用品などでは、誤った使い方が事故につながることもあります。そのような商品の場合、注意事項は紙面やPDF、Webページなどで明確に整理されている必要があります。

トラブルシューティングも、動画が苦手とする分野の一つです。

たとえば、商品にエラー表示が出た場合、ユーザーが知りたいのは「このエラーは何を意味しているのか」「どう対処すればよいのか」です。

このような情報は、エラーコードごとに一覧になっていた方が便利です。動画で一つずつ説明されていると、自分に関係のあるエラーを探すだけで時間がかかってしまいます。

さらに、分岐が多い説明も動画には向きにくい場合があります。

「Aの場合はこの手順、Bの場合はこの手順、Cの場合は別の部品を使う」といった説明は、動画にすると複雑になりがちです。視聴者が自分に関係のない情報まで見なければならず、途中で混乱してしまうこともあります。

このような場合は、フローチャートや表、チェックリストの方が適していることがあります。

つまり、動画マニュアルは「流れを見せる」ことには強い一方で、「情報を探す」「条件を比較する」「必要な箇所だけを確認する」ことには弱い面があります。

商品やサービスによって向き不向きは変わる

動画マニュアルが向いているかどうかは、商品やサービスによっても大きく変わってきます。

たとえば、動作や手順が重要な商品は、動画との相性が良いと思われます。

工具、家電、調理器具、組み立て家具、アプリ操作などは、実際の使い方を見せることで理解しやすくなります。ユーザーが「見ながら真似をする」ことができるからです。
(ただ、アプリ操作の場合、動画を見ることができるデバイスを別に持っていないと、逆効果になります。アプリをスマホで操作するのに、スマホで操作動画を見ることはできませんし・・)

一方で、仕様や条件、安全確認が重要な商品では、動画だけでは不十分ではないでしょうか。

業務用機器、医療・介護用品、工業製品、農機具、電気設備、化学製品、安全用品などは、使用条件や注意点を正確に確認する必要がありますよね。

このような商品では、ユーザーが動画を見て何となく理解するだけでは危険な場合があります。必要な情報を正確に読み取り、必要なときに再確認できる形が必要です。

また、サービスに関連する業務マニュアルでも同じことが言えます。

たとえば、接客研修や作業研修のように、動きや言い方、対応の流れを伝えたい場合は動画が有効ですよね。実際の場面を再現することで、文章だけでは伝えにくい雰囲気やタイミングを伝えることができるからです。

一方で、契約条件、料金体系、利用規約、申請手続き、問い合わせ対応の分岐などは、動画だけではわかりづらいことがあります。
従業員教育用として考えるのであれば、これらは動画+紙などでのマニュアルがふさわしいのではないでしょうか。

このように考えると、動画マニュアルに向いているかどうかは、「その商品が動画向きかどうか」だけでなく、「誰に、どの情報を伝えたいのか」によって決まってくると考えられます。

同じ商品でも、組み立て手順は動画向きかもしれません。しかし、注意事項や部品一覧、保証条件は紙やPDF向きかもしれません。
また、社内教育として考える場合、動画だけでは十分ではない場合も多いでしょう。

つまり、商品単位で「動画にする」「動画にしない」と考えるのではなく、説明内容ごと、ターゲットごとに最適な媒体を選ぶことが大切だと思います。

動画・紙・Web・イラストをどう使い分けていくとよいのか

これからのマニュアル制作では、動画か紙かという二択ではなく、それぞれの媒体の役割を整理して使い分けることが重要になると思います。

たとえば、作業の流れを伝えるなら動画が有効ですよね。
細かな手順を確認するなら、イラスト付きの説明が役立ちます。
仕様や注意事項を確認するなら、紙やPDFが適しています。
よくある質問やエラー対応を探すなら、検索できるWebページが便利です。
現場で頻繁に確認する内容なら、簡易マニュアルにして見やすく、耐久性が高い媒体で作ることが大切です。

このように、説明したい内容によって媒体を使い分けることで、ユーザー(商品使用者だけでなく、その商品を説明する人や設置する人も含みます)にとって使いやすいマニュアルになっていくのではないでしょうか。

各媒体、向いている役割

各媒体、向いている役割をまとめてみます。

・動画・・・最初の理解を助ける役割に向いています。
・紙やPDF・・・正確な情報を保管し、必要なときに確認する役割に向いています。
・Webページ・・・検索性や更新性に優れています。
・イラスト・・・文章だけでは伝わりにくい構造や位置関係を補足する役割があります。

これらの役割を理解した上で、それぞれの媒体を組み合わせて活用する、という方法もありますよね。

たとえば、商品の使い方を説明する場合、最初に動画で全体の流れを見せ、その後に紙やPDFで細かな手順や注意点を確認できるようにする。さらに、トラブル対応はWebページにまとめ、検索しやすくする。

このように組み合わせれば、動画の良さを活かしながら、動画の弱点を他の媒体で補うことができます。

特に、イラストは動画と紙の中間的な役割を果たすことがあります。

写真や動画では情報量が多すぎて、かえって注目すべき部分がわかりにくいことがあります。その点、イラストであれば、必要な部分を強調したり、不要な情報を省略したりできます。

部品の位置関係、取り付け方向、注意すべき箇所、作業姿勢などをわかりやすく整理するには、イラストが効果的です。

動画、文章、写真、イラストには、それぞれ得意なことがあります。大切なのは、どれか一つを選ぶことではなく、それぞれの強みを活かして組み合わせることではないでしょうか。
(マニュアル制作者の皆さんは、十分わかっていらっしゃると思いますが・・)

動画マニュアル導入で気をつけたいことを考えて見ます

上記を考慮した上で、「動画マニュアル」を作っていこう!と決まったとします。
そんなとき、気をつけたいことを考えていきます。

まず、動画マニュアルを導入する場合には、「動画を作ること」が目的にならないようにしないといけません。

動画は見た目にもわかりやすく、導入すると新しい取り組みに見えます。しかし、ユーザーにとって使いやすいかどうかは別の問題です。

たとえば、動画の時間が長すぎると、必要な情報にたどり着く前に離脱されてしまう可能性があります。説明が一つの動画に詰め込まれすぎていると、見返すときにも不便です。

動画マニュアルを作る場合は、内容ごとに短く分けることが大切です。

「開封と内容物の確認」
「組み立て方法」
「基本操作」
「お手入れ方法」
「よくあるトラブル」

このようにテーマごとに分けることで、ユーザーは必要な動画だけを見ることができます。

また、動画の中で重要なポイントを表示する場合も、画面上に一瞬出すだけではなく、別途テキストや図として確認できるようにしておくと親切です。
(その様な場合は、YouTubeなどに動画を上げるだけでなく、WEBページ内で動画+補足説明を見ることができる様な設計にしておくことをおすすめします)

動画を見る環境にも配慮が必要です。

ユーザーがいつでも音声付きで動画を見られるとは限りません。職場や現場、屋外などでは音を出せない場合もあります。そのため、字幕やテロップを入れる、音声がなくても内容がわかる構成にする、といった工夫も必要です。

また、通信環境が悪い場所では、動画がスムーズに再生できないこともあります。現場で使うマニュアルの場合、動画だけに頼ると、いざというときに確認できない可能性もあります。

この点でも、動画と紙・PDF・Webページを組み合わせることが大切です。

あとは、ユーザーが動画やWEBを見るデバイスについても想定が必要です。スマートフォンで見ることが多いとなると、動画内にたくさんの情報を詰め込みすぎるのは避けた方が良いでしょう。

また、ユーザーの対象年齢なども考えた動画作りも大切になりますね。

最後に

動画マニュアルは、今後ますます広がっていくと考えられます。

スマートフォンで手軽に見られ、実際の動きや手順を直感的に理解できる動画は、マニュアルの表現手段として非常に有効ですよね。
また、若年層にとっては動画は「存在して普通のもの」であり、動画マニュアルがない商品は「欲しくないな」と選択されなくなっていくことも大いに考えられます。

しかし、動画マニュアルは万能ではありません。

動画が得意なのは、動きや流れを見せることです。一方で、必要な情報を探したり、細かな条件を確認したり、注意事項を何度も読み返したりする用途には向いていない場合があります。

大切なのは、動画・紙・PDF・Web・イラストを対立するものとして考えるのではなく、それぞれの役割を整理して組み合わせることではないでしょうか。

マニュアルの目的は、情報を載せることではなく、ユーザーが正しく理解し、安心して使えるようにすることです。

そのためには、「動画にするかどうか」だけではなく、「何を、誰に、どの場面で、どのように伝えるのか」を考える必要があります。

動画マニュアルが増えている今だからこそ、あらためてマニュアルの本来の役割を見直すことが大切ではないでしょうか。

ユーザーにとって本当にわかりやすいマニュアルとは、必ずしも最新の手法を使ったものではありません。

必要な情報が、必要なときに、最もわかりやすい形で届くこと。

それこそが、これからのマニュアル制作に求められる考え方だと思います。

それらをじっくり考えた上で、今私たちができること、考えていきたいですよね。
もしトップダウンで「動画マニュアルを作りなさい!」という号令が出てきましたら、この記事を参考に、トップに意見していただければ、うれしいです(笑)。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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